めでたく大学に合格し、一安心したのも束の間、これからお子さんが一人暮らしをするにあたり、月々の仕送りはいくら送ればいいのか、頭を悩ませている親御さんも多いのではないでしょうか。
「仕送り金」と一口に言っても、
- 東京の大学に進学するのか
- 地方の大学に進学するのか
と進学する地域によって必要な生活費は大きく異なりますし、
- 理系学部に進学するのか
- 文系学部に進学するのか
ということでも、研究に取られる時間が異なるため、アルバイトができる時間も変わってきます。
そこで、本記事ではこうした進学する地域や進学する学部ごとで、大学生への仕送り金はいくら必要なのかを徹底分析していきます。
分析に当たっては、大学生の生活に関する調査や統計データをもとに信頼できる仕送り金額を算出しているので、ぜひ参考にしてみてください。
大学生への仕送り金額(全国平均)
全国大学生協連が行っている最新の調査によると、全国の大学生(下宿生)が親から仕送りされている金額は次のようになっています。
直近の2016年における平均的な仕送り金額は月70,610円と分かります。
このグラフを見る限り、大学生で下宿をするのであれば、およそ7万円程度を月々仕送りしていけば大学生として平均的な生活ができるのではないかと予想されます。
ということで、進学したら月に7万円ほどお子さんに送っておげましょう。以上。
…ちょっと待ってください!
本当に月々7万円の生活費を仕送りしていけば、大学生として適正な生活が送れるのでしょうか。
というのも、上のグラフで紹介した金額は、あくまで平均値のみです。
最初に述べたように、一口に大学生といっても、住んでいる地域や大学での研究に掛かる時間は様々です。
つまり、平均値だけみて安易に仕送り金額を決めてしまうのは危険な行為であり、もう少しデータを違った側面から仕送り金額を検討していく必要があるのではないでしょうか。
そんな理由から、仕送り金額の推移を別視点でグラフ化したものを紹介します。
このグラフは月々の仕送り金を
- 10万円以上の割合(青)
- 5万円以上10万円未満の割合(橙)
- 5万円未満の割合(灰)
とし、折れ線グラフで表したものです。
これを見ると、先ほど紹介した仕送り金額の平均値だけでは見えない部分が見えてきます。
今から20年前の1995年ごろでは、月の仕送り金が10万円以上の学生が全体の65%程度を占めているのに対し、2015年にはその割合は、およそ半分の30%程度にまで落ち込んでいます。
つまり、親御さんがイメージする学生生活は仕送りの平均金額7万円よりはるかに多くの仕送りによって成り立っていた学生生活なのかもしれないわけです。
もし、全国平均額の平均7万円をもとに、月々7万円を仕送りしてあげれば、ご自身が送ってきたような大学生活を送れると考えているのであれば、その考えは見直す必要がありそうです。
さらに、1か月間の収入内訳を確認すると、
減ってしまった「仕送り」を補うべく、「奨学金」や「アルバイト代」を生活費に充てていることが分かります。
では、安易に奨学金を借りて、生活費に充ててもらえばいいかというとそれはそれで大きな問題を背負うことになります。
アルバイトも適正な範囲で行うことは社会勉強にもなり、お金の有難味を実感できる有用な手段ではありますが、必ず月○○円以上稼がないと生活できないという状況に追い込まれた学生は大学の勉強や研究よりもアルバイトを優先せざる得なくなり、何のために大学に行っているのかが分からなくなってしまいます。
このような今の大学生の置かれた現状を踏まえると、「平均7万円」を根拠にしない真の適正な仕送り金額を知ることは、大きな意味を持つのではないでしょうか。
大学生の1か月間の生活費
仕送り金額を決めるにあたり、参考になるのは大学生が1か月間過ごすに当たって発生する生活費ではないでしょうか。
一人暮らしをする大学生の1か月あたりの平均生活費は、以下のようになっています。
この生活費についても、あくまで全国の平均値のため、この金額を鵜呑みにするのではなくお子さんの進学する地域性も考慮した生活費を想定しておく必要があります。
では、地域性を踏まえた生活費を知るにはどうしたらよいのでしょうか。
大都市と地方で違う生活費
お子さんが進学する地域により、家賃や交通費を中心に必要な費用は上記の平均値と大きく変化することが予想されます。
では、どのようにしてお子さんが住む地域に適正な生活費を予測すればいいのでしょうか。
実は、これを調べる良い方法があります。
それは、各大学が行っている独自の生活費調査を調べることです。
日本にあるほとんどの大学では、実際にその大学に通っている大学生を対象とした生活実態調査を行っており、その結果をHPで公開しています。
調べてみると、国公立大学は独自の調査を行っていてHPからその情報を確認できます。
ただし、私立大学の多くは全国平均を載せているところが多いため、あまり参考になりませんが、早稲田大学は独自の調査結果を実施し、非常に分かりやすくまとめています。
- 早稲田大学(調査結果はこちら)
生活費には、学費と違って私立大学と国公立大学とで大きな違いはないため、近隣の大学のHPから、こうした実態調査を調べてみることは、より適正な仕送り金額を決定するうえで友好的だと思われます。
参考程度に、早稲田大学(大都市)と秋田大学(地方)の生活費実態調査の結果をまとめておきます。
これをもとにするならば、
- 大都市の生活費…14万円
- 地方の生活費…10万円
を適正な生活費と想定しておけば大きな誤差が生まれることはなさそうです。
また、国立大学に限定されますが、寮に入る場合、大きく住居費を抑えられるため、この金額から大都市で4万円程度、地方で2万円程度引いた金額を想定しておきましょう。
生活費以外に想定しておくべき費用
子供を大学に送るにあたり、「学費」と「生活費」を用意しておけばと何とかなると思ってしまいますが、実は大学生活を送る上では、この2つ以外にも様々な費用が掛かってきます。
この費用については、上でも紹介した早稲田大学の実態調査が分かりやすいため、そこから引用させていただきます。
詳細:https://www.wcoop.ne.jp/start/living/pdf/life.pdf
このような費用が生活費以外にも発生してくることが予想されます。
上記の項目のすべてが必要になるケースと、一部不必要になるケースともちろんあるわけですが、年間20万円程度は生活費と別で費用が発生することを予測しておいた方が、いざというとき慌てずに済むかもしれません。
大学生活に必要な生活費
こちらの表が、各種調査をもとにした適正な生活費となります。
では、このうちどの程度を仕送りとして月々送っていくことを想定しておけばいいのでしょうか。
そこにはアルバイトでどれだけ稼ぐかが大きくかかわるため、大学生アルバイトに関する実態をデータから読み解いていくことにします。
大学生のアルバイト実態
大学生のアルバイト状況は、リクルートが発表した大学生の実態調査2016を見ることで、全国的な動向が読み取れます。
同調査に寄ると、大学生のアルバイト収入は次のようになっています。
このように、進学先が文系なのか理系なのかで月に1万円もの差が生じてきます。
これは文系に比べ、理系のゼミ等では研究に多大な時間を要するものも多く、アルバイトの時間を確保することが難しいことが要因として考えられます。
ただ、このデータもあくまで全国平均であるため、もう少し実態を反映したデータを探してみることにしました。
というのも、大学によっては単位認定が非常に緩く、学生がアルバイトに精を出しすぎているのではないかと感じる大学も多くあります。そうした学生の中には月に20万円以上もアルバイトで収入を得ている者も少なくないようです。
そのため、上記のデータをもとにお子さんに月4万円アルバイトで稼ぐことを前提に、仕送り金額を決定していくことは少々危険が伴うのではないかと感じています。
そこで、より具体的なデータとして、アルバイトに関する調査が非常によくまとめられている大阪大学の生活調査を紹介します。
アルバイトをしていない学生
同調査によると、所属別の「アルバイトをしていない」学生の割合は次のようになっています。
上で紹介したアルバイト収入の平均額はあくまでアルバイトをしている学生の平均であるため、ここでまとめたアルバイトをしていない学生がどれほどいるのかを知っておくことも大切です。
大学生の本分は、あくまで研究です。
そう考え、研究に専念している、もしくは研究が忙しくアルバイトをしたくてもできない学生が、こと理系では3人に1人にも上る割合でいることは、仕送り金額を決めるうえで親御さんは肝に銘じておくべきことだと思います。
また、1年次・2年次は必履修科目が多くあり、卒業認定単位を取得するためにかなりの授業コマ数が時間割に組み込まれています。
親御さん世代の時は、大学の授業はすぐに休講になり(特に学生運動時)、簡単に単位を取ることができるイメージを持っている方もいるでしょうが、現在は出席や授業態度、提出レポートに単位認定テストまで、かなり厳しく授業に臨む姿勢や努力が求められており、「アルバイトがあるから今日は休むか。」は通用しない時代になっているのです。
アルバイトで得ている収入額
さらに、アルバイトによる収入額の割合を見てみても、理系では月に30,000円以上稼いでいる学生の割合は30%程度しかいないことが分かります。(文系で37%)
大阪大学の調査結果をもとに、すべての大学生を語るのは難しいかもしれませんが、アルバイトを前提にした生活費の補充は、学生にとって非常に負担が大きくなる可能性があることは間違いないはずです。
大学の講義のない土日や長期休業中を利用した無理ないアルバイトでは理系で月額2万円程度・文系で3万円程度と想定しておくべきではないでしょうか。
大学生の仕送り適正金額はこちら
以上、全国平均値だけでは分からないより詳細なデータをもとに、大学生の適正な仕送り金額を表にまとめてみます。
こちらの表がひとつの目安になれば幸いです。
今のご時世、奨学金を借りてこの仕送り金を減らしたいと考える親御さんも多いかと思いますが、その場合はその金額をここから引いてください。
ただ、奨学金を借りることで生じるお子さんの負担は、これからの時代大変大きなものとなっていくことも頭に入れておきましょう。
まとめ
少し前になりますが、次の記事が話題を集めていました。
仕送り金として月13万円もらっている学生が「誰にも甘えられない環境に身を置きたい」とコメントしたことで、SNSを中心に「仕送り13万円も貰っていて甘えられない環境とか言うな!」という炎上が起こっていました。
仕送り13万円が甘えた環境なのかどうかはさておき、東京都のような大都市に進学する大学生にとって、親からの仕送り13万円は決して多すぎる金額ということはなさそうです。
いずれにせよ、進学に伴う仕送り金をいくらにするかを検討する場合、平均値をもとに仕送り金額を決め、残りは奨学金とアルバイトで補てんすればいいんだと安易に考えず、ここで紹介したような方法で適正な仕送り金額を検討していただけたら幸いです。
以上、本日は、データで読み解く!大学生の仕送り金額はいくらが適正なのか?について、レポートしました。