これからの時代、一番お金に直結する力は「因果推論力」かもしれない。
そんな気持ちにさせられるほど、因果推論力の重要性を認識できるのが、今バカ売れしている「原因と結果」の経済学です。
つまり、因果推論力があるということは、現象の原因を見抜く力を持ち合わせているということなのです。
今の時代、IT技術の革新により、誰でも多くの情報が簡単に入手できるようになりました。
情報が簡単に大量に収入できるということは、様々な恩恵を享受できるようになった反面、情報量が膨大になりすぎてしまったことで、何と何が結びついて目の前の現象が生じているのかを読み解きにくくしています。
こうした情報過多の時代において、原因と結果を結びつける力はますます重要度を増し、これからまさに錬金術となっていくことが予想されるわけです。
- なぜこの商品が売れたのか
- なぜ人々に注目されたのか
得られる情報が多いだけに、因果推論の分析が難しい時代に突入しているわけです。
「相関関係」と「因果関係」は全く別物である
著書「原因と結果」の経済学の中で、最も強調されているメッセージが「相関関係」があるからといって「因果関係」もあることを意味してはいないということです。
著書内では、この意味を具体例をいくつも上げながら、切々とこのメッセージを強調するとともに、因果推論力を身に着けるために、大切にすべきことを明示しています。
2つの変数の関係が因果関係なのか、相関関係なのかを確認するために、次の3つのことを疑ってかかることをおすすめしたい。
その3つとは、
- 「まったくの偶然」ではないか
- 「第3の変数」は存在していないか
- 「逆の因果関係」は存在していないか
である。
この3つのことは本を読んでいくと非常に重要であることがよく分かるわけですが、私個人としては、これら3つのポイントをどうやって身に着けていくことができるのか、も同様に重要であると感じました。
ということで、本日学ぶ統計学の知識を次のように設定します。
本日学ぶ統計学の知識
本日、深めていく統計学知識は、次のことについてです。
☑「第3の変数」を見抜く力
☑「逆の因果関係」を見抜く力
これらの因果推論力に必要な視点を、書籍「原因と結果」の経済学の力を借りながら、私なりに落とし込んでいきたいと思います。
因果推論を身に着ける3つのポイント
それでは早速、書籍で紹介されている3つのポイントの事例や解説に加え、私なりに感じた身に付けるべき視点について考察していきます。
「まったくの偶然」による相関関係
出典:「原因と結果」の経済学
まず「まったくの偶然」によって出来上がる相関関係の例ですが、書籍の中では
- 地球温暖化が進むと、海賊が減る
- ニコラス・ケイジの年間映画出演本数、とプールの溺死者数
- スタジオジブリの映画放映日に、アメリカの株価が下がる
などが紹介されています。
このように、「まったくの偶然」によって出来上がる相関関係は、常識的な見識を持ち合わせていればまず騙されることがない事例と言えます。
いわゆる都市伝説的な言い伝えの類がこれに該当するかも知れません。面白がって「えー、本当!?」と疑いながらも、信じて行動してみる程度のことはあれど、ビジネスの現場でこうした相関関係を因果間関係と結びつけてしまうことは、あまりないように思います。
➡「まったくの偶然」を見抜く因果推論力は、常識的な見識が求められる。
「第3の変数」による相関関係
書籍の中で「第3の変数」が因果関係に関係している例として、
- 子供の学力と体力
を挙げ、実際には「親の教育熱心さ」がその2つに影響を及ぼしていることを指摘しています。また、この第3の変数に気付くことができないと、子供の学力を上げるために、運動をさせることに熱心になり、狙いとズレたことにお金と時間をつぎ込んでしまう怖さを訴えています。
2つ目の「第3の変数」によって出来上がる相関関係は、俯瞰的な視点が求められる事例と言えます。
「第3の変数」に気付き、因果関係を読み解くためには、対象の現象だけに注目していては気付くことができません。原因と結果を結び付ける真の影響力に迫るためには、追っている現象とまったく違う視点に立つことが求められることもあるはずです。
➡「第3の変数」を見抜く因果推論力は、俯瞰的な視点が求められる。
「逆の因果関係」による相関関係
「逆の因果関係」の存在とは、
- 警察官が多い地域は、犯罪が多発している
という現象に対し、逆の因果
- 犯罪が多発しているから、警察官が多い
こそが正しい因果関係であることを指摘しています。
私はこの「逆の因果関係」の話を聞いて、数学でいるところの必要・十分条件を思い出した。どちらの因果矢印(必要条件・十分条件)ともチェックしていくことが大切であり、特に因果推論において、「逆の因果関係」を見抜くためには時系列でどちらが先に起こった現象なのかを調査することが必要となります。
ここでの事例の場合、先に起こったことは「犯罪の多発」であり、その対策として「警察官の配備」が行われたわけです。
こうした単純な事例では簡単に突き止められる時間軸も、実際の調査ではどちらが先に起こった現象か、判断が難しい場面のほうが多く存在します。そのため、そもそもの調査の時点で時間軸を意識することが求められるわけです。
➡「逆の因果関係」を見抜く因果推論力は、時間軸を意識した調査能力が求められる。
因果推論力を支える正しい調査
そして、原因と結果を結び付けていくには、やはり正しい統計調査がなされることが大前提となります。
ここでは統計調査の能力・制度を高めることこそ、因果推論力の土台となることを確認してみたいと思います。
因果推論力=統計調査能力
東大生の約半分はリビングで勉強していた!? リビング学習のメリットと成功のひけつ- 毎日新聞
この記事を読み、
「東大生の半分がリビングで勉強している!?」
⇒「だったらリビングで子供を勉強させれば、学力が上がるんじゃないの!?」
と、考えた方は多いのではないでしょうか。
このリビング学習と東京大学生の関係はよくメディアに取り上げられ、リビング学習が学力を伸ばすと騒ぎ立てられているわけですが、ここまで記事を読まれたあなたは「ちょっと待てよ…」と感じてくれているはずです。
えーと…
- まったくの偶然?
- 何か別の要素が絡んでいる?
- 逆の因果になっていないか?
と、本日の記事に基づいて考えてみてください。
そして、考えていくと、ふと気付くことがありませんか。
調査方法おかしくないか?
ということに…
因果推論力を高めれば、欠けている視点が見えてくる
まず、リビング学習と東大合格がまったくの「偶然」かどうかを知るためには、東京大学に落ちた生徒はもとより、学力の伸びなかった生徒がどこで勉強していたかという情報が必要になります。
だって、学力が伸びなかった学生も、リビングで一生懸命勉強しているかもしれませんよね。つまり、すべての学生を対象にした調査を行った結果次第では、リビングで学習している高校生はむしろ学力に伸び悩んでいる可能性さえあり得るわけです。
さらに、「第3の要素」を探るためには、なぜリビングで勉強したのかという情報も必要になります。
例えば、
- あえてリビングで勉強したのか
- 自室がなくリビングでしか勉強する環境が無かったのか
という情報を得ることにより、住環境の変化が第3の変数となっているかどうかを考察することができます。
このように、この調査で明らかになった真実は、あくまで「東京大学の学生の約半数がリビングで学習していた」という結果であって、決して「リビングで学習すれば東京大学に入れる」でもなければ、「リビングで学習すれば、学力が上がる」ということでもありません。
もし記事にあるような「リビングで学習すれば学力が上がる」ことを結論として目指すのであれば、当然調査対象が東大生だけではなく、すべての高校生であるべきなのです。
本日学んだ統計学の知識&参考文献
原因と結果を見抜く力である因果推論力の重要性を感じていただけたでしょうか。
「因果推論力が高収入と因果関係にあるのか」については私自身の今後を見守ってみてください。
冗談はさておき、統計力を高めていくことと、因果推論力を高めていくことは車の両車輪であることは間違いないはずです。
これからの時代を生き抜くためにも、まずは読みやすい本からでもトライしてみてはいかがでしょうか。