ドラマ「下剋上受験」が大変な反響を巻き起こしています。
私のブログでも以前、「下剋上受験」をテーマにした記事をUPしましたが、ドラマ放映と共に大きく注目を集めています。
上の記事では、下剋上受験をするためには子供の桜井佳織さんの「学力」を高めることと同じくらい、親の桜井信一「年収」を高める必要があることを訴えました。
そこで、この記事では、そこからもう少し踏み込み「では、一体いくらの年収があれば下剋上受験が達成できるのか」について、桜井信一さんと一緒にシミュレーションしていこうと思います。
※画像:金曜ドラマ『下剋上受験』|TBSテレビより出典。吹き出しはすべてフィクション。
果たして、下剋上受験を達成するために必要な年収はいくらなのでしょうか。できるだけ項目を具体的に洗い出しながら、シミュレーションしていきたいと思います。
下剋上受験するということ
ここでは、下剋上受験をするために必要な親の収入は、どの程度あればいいのかについてシミュレーションを行っていこうと思います。
家族構成は、本家本元の桜井家と同じ「夫婦+子供1人の家族」を想定していくこととします。
"上下"を決めるものは何か
下剋上受験とは、何を「下」として何を「上」と定義するのでしょうか。
書籍を読む限り、筆者の桜井信一さんは「学歴」について強いコンプレックスを持っており、ご自身の中卒という学歴を下とし、東京大学を頂上とし、早稲田大学・慶応大学など偏差値の高い大学に入学することを上と捉えているようです。
実際、桜井さんは書籍の中で「MARCHレベルには魅力がない」ということを書かれており、何としても娘を高学歴のエリートにしたいと並々ならぬ闘志を燃やし、超難関名門私立中学の受験を目指していきます。
下剋上受験後にある未来
さて、下剋上受験の結末はドラマを楽しみにしていただければいいとして、ここでは下剋上受験"後"の未来に待ち受ける世界へと目を向けていくこととします。
仮に、超難関私立中学に合格として、その後待ち受けているのは学費の掛かる私立中・高一貫教育が6年間続いていくことになります。
その後は、桜井信一さんの考える「上」を目指すのであれば、東京大学に不合格になったとしても、「上」と位置付ける早稲田大学か慶應義塾大学に合格するような事態に備えておく必要があるわけです。
さらに、もし理系の学部に進学することがあれば、早稲田大学も慶應義塾大学も大学院への進学率は80%を超えていますから、大学院への進学へも対応できるようにしておくことが求められるわけです。
つまり、下剋上受験を子供にさせるということは、親として次のことを準備しておく必要があるわけです。
本来は、このレベルの大学に1年間で合格できるとは限らないため、1年間~数年間の浪人費用や、さらなる高学歴コースである医・薬学部・海外大学・博士課程などにも送りだせる準備をしておくことが「真の下剋上」なのかもしれません。
しかし、そこは目をつぶり、ここでは、上の12年間の学費を確保することを目指していきます。
下剋上に必要な学費以外の支出
子供の学費さえ支払えば、下剋上受験が成功するわけではありません。当然・家族が生きていくためにはお金が掛かります。
以下、教育費以外に必要な費用について確認していくこととします。主に、使用する費用は、東京都で平均的な生活をするために必要な支出を想定していきます。これについては、以前シミュレーションをした記事がありますので、こちらの金額を参考にしていくこととします。
合わせて読みたい!
学費を貯めるために節約生活を送ることは必須でしょうが、だからと言って集中して勉強できない壁の薄いアパートに住むことはできませんし、食費をケチっていつもカップラーメンという生活では長い受験勉強に耐えうる体力付かないでしょうし、何より頭に栄養が回っていきません。
桜井信一さんは、どの部分の出費を抑えたかというとご自身が子供の勉強を見る「親塾」をすることで塾代を節約したわけですが、これはすべての方にできることではありません。書籍を見ると、「桜井さん、仕事何しているの?」というくらい子供のために教材研究を行い、子供と一緒に問題を昼夜を問わず解いていることが分かります。
桜井信一さんの並々ならぬ努力により、子供の学力を向上させることができた「親塾」ですが、会社勤めのサラリーマンには限りなく不可能な対策のはずで、どうしても塾に通わせる必要がでてきます。(もしくは、親塾をやる期間は仕事を辞め、アルバイトなど時間がフレキシブルな職に就く必要があります。当然、収入は激減するはずです。)
こうした前提条件をもとに、教育費以外の必要支出費を確認していくこととします。
下剋上に必要な生活費
東京都における平均的な生活費は「272,265円」です。<引用元:統計局/家計調査報告/平成27年平均速報結果>
この生活費を構成している項目は、
- 食費
- 光熱・水道代
- 家具・家事用品
- 被覆費
- 医療費
- 通信費
- 娯楽費
- 雑費(美容代・小遣いなど)
となっているのですが、この中で節約するとしたら、3.家具・家事用品、6.通信費、7.娯楽費、8.雑費でしょうか。
とはいえ、子供の成長に合わせ、最低限の衣類費は必要ですし、情報が命ともいえる超難関校への受験において通信費を0にすることもできません。娯楽費や美容代・小遣いカットくらいが関の山でしょうか。
それでも削りに削って月に4万円以上の節約をしたとしても生活費は少なくとも23万円程度は必要なってきます。
繰り返しになりますが、無茶苦茶な節約では下剋上受験に必要な体力や情報力を失ってしまうわけです。
下剋上に必要な住宅費
桜井家が目指した桜蔭学園中・高始め、御三家といわれる超難関私立中学は、東京都内でも超都心部にその校舎があります。
また、これらの学校の多くは「自宅からの通学時間1時間程度」という条件を貸しています。親元を離れ、子供一人だけアパートを借りて生活することは禁止されており、あくまで親と一緒に暮らしていくことを求めています。
東京都の家賃相場は、2LDK~3DKで「月15万円」です。<引用元:見える!賃貸経営 | HOME'S不動産投資>
都心部に住むことを考えると、これでも安いのかもしれませんが、保険や駐車場代・契約更新費用などを含めて月15万円を支払っていくこととします。
下剋上に必要な自動車費
自動車は東京都の都心では、贅沢品以外の何物でもありません。駐車場を確保するだけでも、月2万円以上は掛かるでしょうし、維持費だって馬鹿になりません。
しかし、桜井家は自動車を所有しているそうですし、東京都全体でも車を所有しない家庭は23%となっていることから、車を1台所有していることを想定することとします。
自動車の購入は、平均7年で買換え、購入金額は214万円にも上ります。さらに車1台の維持費は、駐車場を除いても次の出費が掛かってきます。
- ガソリン代
- 保険代
- 税金代
- 車検代
これらを合計すると、年額18万円以上は軽く掛かるのが相場です。
下剋上に必要な塾代
先ほども述べましたが、桜井信一さんのように塾代を節約するために親自身が受験についような"国・数・理・社"の科目を全て子供に教えていくことは不可能に近いと思います。
私は中学受験というものは経験ありませんが、親塾をやり切った桜井信一さんの凄さはよく分かります。
とはいえ、塾に通わせる必要性はどうしても感じてしまいます。桜井信一さんも書籍の中で度々登場させる超難関中学の受験に対応している「サピックス」という塾の料金をここでは参考にしていくこととします。
サピックスに小学校4年生~6年生まで通わせると、塾代は3年間で合計127万7640円も必要になります。<引用元:ReseMom>
超難関中・高に入学すれば、その後塾代が掛からないというわけではないようですが、ここでは費用から除外することとします。
下剋上に必要な老後資金
下剋上受験が成功し、子供を無事エリートに育て上げれば"人生終了"というわけにはいきません。
親だって、その後の人生を生きていく必要があります。そのためには老後資金だって貯めておく必要があるわけです。子供も自分のために親が下流老人になる姿は望んでいないはずです。
自分自身の老後資金は3552万円は貯蓄しておく必要があります。<引用元:マネー研究所>(同引用元には、賃貸住宅なら4500万円必要としている)
ここまでの費用まとめ
以上が、下剋上受験を成功させるために必要な「教育費以外の費用」ということになります。
ここまでの教育費以外の支出費用をまとめておきます。
この中で、削るとしたら自動車費用くらいでしょうか。
それ以外は、娯楽を全くせず、美容に掛かるお金を節約し、余ったお金は老後資金・教育費に向け貯蓄していく生活を想定しています。
実際、桜井信一さんは友人との交友関係・お酒・たばこを断つことを実践されています。ここでのシミュレーションでも同様、親の娯楽を我慢し、節約を心がけてもらうこととします。それも一生に渡って…
下剋上受験に必要な学費
いよいよ本命の登場です。ここからは、子供の教育費についてまとめてきます。
保育園の保育料
のちほど算出される年収をもとに、東京都文京区の保育料料金表を参考に子供が1歳から6歳まで保育園に預けた際の保育料を算出すると、6年間の合計で196万800円になりました。ここから補助金があることを考え、6年間で合計150万円の保育料が必要であるとします。
小学校の学費
下剋上受験において小学校が"唯一公立"に通う教育機関になります。
教育費を列挙してみますと、次のようになります。<引用元:文部科学省「子どもの学習費調査」>
- 学校教育費 年間5万9228円
- 学校給食費 年間4万3176円
- 学校外活動費 年間21万9304円
学校外活動費は小学校3年生までとし、小学校4年生からは上記の塾代を加算することとします。
これらをもとに計算するると、塾代を除く小学校の学費は、合計127万2336円となることが分かります。
超難関中・高の学費
ここでは、桜井家が目指した桜蔭学園中・高の学費を参考にしていきます。
まずは、桜蔭学園中学校の学費です。<引用元:桜蔭学園HP>
- 検定料 2万5000円
- 入学金 38万円
- 制服代 4万9000円
- 寄付金 20万円
ここまでが初年度のみの費用です。
- 授業料 44万7600円
- 施設費 9万6000円
- 教育充実費 9万6000円
- 生徒会費 2万6000円
ここまでが3年間毎年かかる費用です。
以上を3年間合計すると桜蔭学園中学時代にかかる学費は、合計330万であることがわかります。
続いて、桜蔭学園高等学校の学費について見ていきます。<引用元:JS日本の学校>
- 入学金 22万円
- 制服代 4万9000円
- 寄付金 20万円
- 授業料 45万9600円
- 施設費 7万2000円
- その他 11万7000円
こちらを合計した桜蔭学園高校時代にかかる学費は、合計241万円であることが分かります。
大学・大学院の学費
ここでは、最初の前提で述べたように早稲田大学・慶應義塾大学の理系学部を卒業し、大学院に進学することを想定し、学費を準備しておくことを目指します。
合わせて読みたい!
【リアルでガチなシミュレーション】子どもの教育資金は、いくら必要なのか!?
早稲田大学(大学院)の先進理工学部に必要な学費は、以前上のシミュレーションで使用していますので、そちらを用いることにします。
こちらが早稲田大学4年間の学費です。
こちらが早稲田大学大学院2年間の学費です。<引用元:早稲田大学HP>
こちらを合計した早稲田大学と大学院時代にかかる学費は、合計935万円であることが分かります。
以上が、下剋上受験を行うための学費の全貌になります。
下剋上受験に必要な年収
ここまでの準備をもとに、下剋上受験するために必要な年収を算出していきます。
必要な年収を割り出すために使うシミュレーターサイトは、資金計画シミュレーション - 住宅金融支援機構を使用していきます。
ただ、こちらのサイトは住宅ローンを組むことを前提にしているため、住宅費は35年分に限定し、合計額が同じになるように設定していくこととします。
それでは、下剋上を目指す夫婦が30歳時点で子供を産み、下剋上受験を成功させ、35年後の65歳時点で自分たちの老後資金を確保することができる年収をシミュレーションしていきます。
貯蓄残高の推移
あれこれ年収を入れ替え、ようやく上のような目標金額を達成することができました。一度も赤字家計にならず、しっかりと老後資金を65歳時に3500万円程度貯金ができる"ギリギリの年収"を算出しました。
その条件をまとめてみます。
下剋上に必要な収入条件
夫婦30歳時点での世帯年収800万円がギリギリのラインという結果になりました。
ちなみに、この年収を毎年1%ずつ上昇させていくわけですが、これにより世帯年収は次のように上昇しています。
- 40歳時 893万円
- 50歳時 956万円
- 55歳以降 1000万円越え
また、この年収にしては、貯金額と退職金が少ないかもしれませんが、それをカバーするにはこれほどの年収が必要というわけです。
そして、60歳で退職し、退職金を受け取って以降も、65歳までの5年間「再雇用」として働き、年収300万円以上を維持していかなければ老後資金が確保できませんでした。
下剋上受験の現実
ちなみに、30歳時に年収800万円を手にできる人はどれほどいるのでしょうか。
平均年収2016|DODAによると、20代における年収は次のようになっています。
20代で年収800万円以上に到達している人は、わずか0.8%しかいないことが分かります。30歳で年収800万円代に達する可能性がある年収700万円以上を含めても、1.7%いか存在しない世界であることが分かります。
つまり、シングルインカム状態で子供を下剋上受験にチャレンジさせることができる時点ですでに天上人の世界で暮らしている必要があるわけです。もはや、下剋上とは呼べませんね。
夫婦共働きでも厳しい現実
では、夫婦共働きでそれぞれが年収400万円ずつ稼いぎ、世帯年収800万円に達していればよいのかというと、そこにも当然大きな壁が存在します。
まず、「50代で世帯年収1000万円以上を確保することができるのかという壁」が存在します。厚生労働省が取りまとめる国民生活基礎調査を見ても、世帯主が50代の世帯における年収平均は720万円に留まっています。これを見る限り、いくらダブルインカムが有利といえども、その到達しなければいけない目標値は決して低くないことが分かります。。
上のシミュレーションはあくまでギリギリ目標値を達成した状況になっているわけで、夫婦が一度でも仕事を休職するようであれば、厳しい家計状態に突入してしまうわけです。
つまり、仮に目標年収に達している家計においても「育児休業も取らず、夫婦共々体調を崩すことも許されないという壁」も存在しているのです。35年に渡り、着々と仕事に精を出し続け、年収上昇を保ちつつ、プライベートでは節約に努め、生活のすべてを子供の下剋上に捧げる決意と覚悟が必要なのです。
桜井信一さんが伝えたいこと
下剋上受験に必要な年収をシミュレーションしてみると、いかに親の経済力が重要な要素であるかが分かります。
子供1人だけでもこれだけかかるわけですから、子供2人以上が家庭において教育環境を整えることがどれほど経済的に負担がかかるか考えさせられる結果となりました。
桜井信一さんは、著書「下剋上受験」の中で何度も"エリート"という言葉・表現を使われていますが、もし仮に"エリート"の定義が、上で定めたようにどれだけ高学歴であるかによるものとするならば、親が高収入であることが子供をエリートにするための絶対的条件と言えます。(高収入≠エリート)
中卒で、決して年収が高かったわけではないであろう桜井信一さんも、今では本を数冊出版し、ドラマ化され、他に「マイナビ」の開発にも従事していることから間違いなく「高収入」を得ているはずです。
下剋上受験を成し遂げるのであれば、子供の学力を伸ばすと同時に親の経済力を上げる努力が必要であり、これを両方成し遂げた桜井信一さんをモデルケースとして目指していかなければいけないということになります。
親の子供への関わり方は学ぶべきことがあるかもしれない書籍「下剋上受験」ですが、果たして、それ以外にこの書籍から何を学び、実践できるがあるのでしょうか。
私には桜井信一さんが下剋上受験を通じ、真に伝えたいことは「親子の受験記」ではなく"もっと深い問題提起"であるように思えてならないのです。