世帯年収(=世帯所得)の平均は、厚生労働省が発表した最新の調査概要(2019年2月現在)を見ると20代・30代・40代・50代・60代以上と各年代における推移が上記のグラフのように読み取れます。
グラフを見ていただけると分かるように、世帯年収の平均値は、世帯主が40代では700万円を越え、50代になると800万円に迫るほどの金額にもなります。
なんとも羨ましい賃金カーブを描く世帯年収の平均値グラフですが、果たしてこのような年収の推移を実現できたとして、現代の日本では一体どの程度の生活レベルを目指すことができるのでしょうか。
ここでは、平均的な世帯年収を稼ぐ夫婦が
- 平均的な生活費
- 平均的な住居費
- 平均的な教育費
- 平均的な自動車費
という生活レベルを目指すとどうなるのかについて、夫婦の資産をシミュレーションすることで探ってみたいと思います。
世帯年収の平均を稼ぐ夫婦が目指した生活
まず世帯年収の平均値を稼ぐ夫婦の実態を考えてみたいと思います。
上の折れ線グラフは、内閣府が発表した
- 赤:会社員+専業主婦のシングルインカム世帯数
- 青:夫婦共働きのダブルインカム世帯数
の推移を表しています。
グラフを見てもらえば分かるように、共働き夫婦の数は年々増え続けており、平成29年では約65%(3世帯に2世帯の割合)が夫婦共働き世帯となっています。
つまり、初めに紹介した世帯年収の平均値は、夫婦共働きの稼ぎによって実現している部分が多く占めているわけです。
こうした世帯年収の背景を鑑み、以下では夫婦共働きによって世帯年収の平均値を稼ぐ家族を想定した上でシミュレーションを行っていくことにします。
平均的な「生活費」
まず暮らしを支える生活費について、平均的な生活レベルを見ていくことにします。
生活費については、総務省統計局が全国約9千世帯の方々を対象として、家計の収入・支出、貯蓄・負債などを毎月調査し、発表している家計調査をもとにその平均値を参考にしていきます。
ここでは、夫婦共働き世帯(夫婦+未婚の子供1名)と専業主婦世帯(夫婦+未婚の子供1名)を比較した生活費の各項目別における平均出費額を作成してみました。
出費項目 | 専業主婦 | 夫婦共働き |
食費 | 70,073円 | 74,562円 |
光熱費 | 20,329円 | 20,429円 |
家具家事 | 12,064円 | 11,267円 |
被服費 | 13,180円 | 14,671円 |
医療費 | 11,851円 | 11,930円 |
通信費 | 15,054円 | 18,111円 |
教養娯楽 | 28,355円 | 18,499円 |
理美容費 | 20,744円 | 26,310円 |
こづかい | 12,610円 | 11,696円 |
交際費 | 12,614円 | 16,389円 |
合計金額 | 216,874円 | 223,864円 |
ちなみに、この生活費には住居費・教育費・自動車関連費は含まれていません。
✔ 夫婦共働きの場合、月額22万3864円
平均的な「住居費」
続いて、住居費の平均購入金額と住居の種別を探ってみました。
住宅金融支援機構の調査結果によると、上記のグラフのように、3人に1人が『土地付き注文住宅』の購入を選択しており、購入金額は土地及び建物の建築費込みで4039万円が平均レベルであることが分かりました。
ちなみに、家賃7万円の家に30歳から85歳まで住み続けると、家賃のみの総費用が4620万円になり、土地付き注文住宅を超える金額になります。
✔ 土地付き注文住宅を4039万円で購入
平均的な「車費」
続いて、自動車費の平均生活レベルを探っていきます。
平均的な自動車費を割り出すには、次の4つの情報が必要になります。
- 自動車の平均所有台数
- 自動車の平均購入価格
- 自動車の平均保有期間
- 自動車の平均維持費用
これらの項目に必要な費用について、確認していきます。
まず、自動車の平均所有台数は自動車検査登録情報協会の統計情報によると、1世帯当たりの平均保有台数は1.064台であり、自動車の保有率は80.6%であることが分かります。
また、日本自動車工業会の乗用車市場動向調査によると
- 新車から新車へ乗り換える…51%
- 中古車を乗り続けている…23%
と2人に1人が新車を購入し続けていることが分かります。
さらに、同調査によると、新車で乗用車を購入する際の平均購入価格は約298万円であり、平均保有期間は7.1年であることも確認できます。
さらに、自動車を持つということは、保険・ガソリン代・駐車場代・車検代・税金など様々な維持費が発生します。
そこで、ここで得られた普通の暮らしに必要な自動車関連情報をもとに自動車の維持費計算サイトで必要な自動車費用を算出しました。
購入車種 | プリウス |
新車購入費 | 277万円 |
任意保険 | 5000円/月 |
車検費用 | 12万円/2年 |
駐車場代 | 戸建てのため不要 |
維持費 | 62.2万円/年 |
参考:自動車の維持費計算サイト
✔ 298万円の新車を約7年で乗り換え続ける
平均的な「教育費」
続いて、教育費について考えていきます。
子供の出生率は最新の人口動態統計(厚生労働省)によれば「1.44」という数値になっています。
つまり、世帯年収の平均値を稼ぐ夫婦は、子供1人を生み、育てていくことが平均的な状況と考えられます。
そして、その子供の進学パターンは文部科学省「数字で読み解く高等学校」を参考にすると、以下の進学パターンが最も多いことが分かります。
保育園 | 11.0% | 87.6% |
小学校 | 98.8% | 1.2% |
中学校 | 92.8% | 7.2% |
高等学校 | 68.1% | 31.9% |
大学 | 26.4% | 73.6% |
ここでは夫婦共働き世帯を想定していますので、子供は1歳になるころから5歳まで保育園に預ける必要があるわけですが、その後の進路は上記のように進学していくパターンを想定していくことにします。
認可保育園の費用は、平均的な世帯年収では以下の金額が必要となります。
こちらは国が定めている認可保育園の保育料ですが、平均的な世帯年収世帯に求められる保育料は、赤枠で囲まれた箇所になります。
✔ 満3歳未満:4万4500円/月額
✔ 満3歳以上:4万1500円/月額
教育費に関する調査では、「子供の学習費調査(文部科学省)」から小学校から高等学校までの学習費が確認できます。
さらに、私立大学での教育費は、「私立大学学生納付金の調査(文部科学省)」で確認することができます。
大学の教育費は学部や一人暮らしの有無によって大きく異なるわけですが、ここでは極端な値ではない「その他の学部」(赤点線内)に必要な教育費を平均的水準と捉えることにします。
また、私立大学に通う学生の居住形態は次のようになっています。
居住形態 | 割合 |
自宅 | 64.7% |
下宿・寮 | 35.3% |
そこで、ここでは私立大学に自宅から通うことを想定した費用を計上していくことにします。
以上が、子供1人を平均的な進学パターンで育てていくために必要な教育費になります。
平均的な世帯年収を稼ぐ夫婦の末路
ここでは平均的な世帯年収を稼ぐ夫婦を
- 夫婦とも30歳
- 貯金は約350万円
と想定します。
確認のため、平均的な世帯年収をもう一度紹介しておきます。
年齢 | 金額(年間) |
30代 | 594.5万円 |
40代 | 707.6万円 |
50代 | 777.6万円 |
この世帯年収を稼ぐ夫婦が、平均的な暮らしを目指すと、果たしてどうなるのでしょうか。
上記のグラフは30歳時点で350万円あった貯金がどのように変化していくかを表したグラフになります。
一目で分かるように平均的な世帯年収で平均的な暮らしを目指してしまうと一瞬で家計が赤字へ転落してしまうことが分かります。
なんとも恐ろしい結果ですよね。
では、平均的な世帯年収で目指すべき生活レベルはどの程度なのでしょうか。
平均的な世帯年収で目指す生活レベル
平均的な世帯年収の夫婦が、一度も家計を赤字に転落させることなく60歳を迎える生活レベルを探ってみました。
その結果は以下の通りでした。
✔ 生活費は月20万円(月22.4万)
✔ 住居費は2800万円(4039万円)
✔ 自動車は軽自動車を10年で乗換え
✔ 教育費は大学時に年100万円の奨学金を借りる
※( )内は平均レベル
平均的な世帯年収は選択を誤ると人生詰む
このシミュレーションを見ていただいて分かるように、平均的な世帯年収を稼ぐ夫婦ではちょっとした贅沢で人生が詰んでしまう危険があります。
30歳で世帯年収600万円あり、年収5倍程度の住宅を購入してしまうだけで、その後の年収上昇がかなり理想的であったととしても生活費を大幅に節約したり、自動車をあきらめたりする必要がありそうです。
もし世帯年収が平均値レベルで、子供を2人産もうとしたら…
ここで行ったシミュレーションは、ライフプランシミュレーション|スルガ銀行を利用しています。
ぜひ大きな買い物や子供を産む前に、あなたの世帯年収にあったシミュレーションを一度行った上で、人生の決断をすることを強くお勧めします。
世帯年収を上げるために必要なこと
平均的な世帯年収では、ひと昔前では当たり前だったマイホーム・子供・自動車などの生活レベルを実現することが難しいことが分かりました。
それは一昔前と比べて、可処分所得(=手取り)が大幅に減少していることも要因のひとつです。
どれほど世帯収入に変化が起こっているのかは次のレポートに図解付きでまとめていますので、参考にしてみてください。
そのため、私たちにはマイホームや自動車、子供の教育など何かをあきらめるか、世帯年収を上げていくという選択をする必要があります。
最後に、世帯年収を上げるヒントになるかもしれない、私自身の転職エントリーを紹介し、当記事を終えたいと思います。
以上、本日は「平均的な世帯年収で、平均的な暮らしを目指した夫婦の末路」についてご紹介しました。
最後までお付き合いいただき、ありがとうござました。