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床暖房を使用した環境で勉強すると子どもの学力は上がる!これって本当?

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エアコンを使用した環境下より、床暖房を使用した環境下のほうが学習効率が上がります

これはいくつかの床暖房関連会社のHPで目にすることができる床暖房のメリットのひとつです。

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出典:ガス温水床暖房|住まいのご提案|大阪ガスLPG株式会社

大阪ガスに限らず、床暖房関連会社各社のHPで同様のメリットを確認することができます。

わが家も床暖房を導入しているため、さっそく子供が勉強する際は床暖房を付けて勉強させようと思った訳ですが、心のどこかで「これって本当なの?」と疑問に思ってしまったため、この情報の真偽について調べることにしました。

なぜ疑問に思ってしまったのかというと、床暖房には実際使ってみて初めて分かったデメリットがいくつかありました。

床暖房のメリットは十分知られている一方で、こうしたデメリットについては床暖房自体がまだまだ新しい設備のためか、あまり情報公開が進んでいないように感じています。

上のレポートで紹介しているデメリットから床暖房を導入したことを少々後悔している私にとって、冒頭のメリットは子育て中のわが家にとって大変大きなメリットだと感じました。

ところが、この情報の根拠を調べてみたところ、少々怪しい根拠であることが分かってきました。

 

床暖房が学習効率に与える影響に関する研究

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床暖房関連会社各社が主張する「床暖房環境の勉強への好影響」については、ある研究がその根拠になっていることが分かりました。

根拠となる研究

床暖房が学習効率に与える影響に関する研究
CiNii:http://ci.nii.ac.jp/naid/130003871652

この研究の概要についてまずは紹介したいと思います。

研究の目的

この研究では、床暖房環境が学習に与える影響を計測しています。

学習の定義は

  • 集中力
  • 注意力
  • 記憶力に基づく精神作業

とし、床暖房が使用されている環境とエアコンが使用されている環境の双方で学習を計測し、統計処理によって結果を比較・分析しています。

研究の目的は、床暖房環境下とエアコン環境下で学習効率に有意な差があることを主張することです。

実験方法

定義された学習力を、次のテスト結果によって比較しています。

学習能率 計測方法
集中力 内田クレペリンテスト
注意力 ブルドン抹消テスト
記憶力 系列記憶法・リスト記憶法

以上の3項目を、床暖房環境下とエアコン環境下で実施しています。

床暖房環境下とエアコン環境下とはどういった環境下なのかも重要ですので、載せてきます。

環境状況 設定状況
床暖房 床面30℃・床上115㎝20℃
エアコン 床面15℃・床上115㎝22℃

論文内では床暖房環境下を「頭寒足熱型」、エアコン環境下を「頭熱足寒型」と呼んでいます。

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図2は実験時に計測された環境ごとの室内温度となっており、ほぼ上記の設定状況と一致した環境が作られています。

この環境下において東京都内の公立中学校2年生108名(男性54名、女性54名)を対象に、12月23日~28日の6日間実験が行われました。

研究の結論

研究の結論は、次のようなものとなっています。

  1. エアコン環境下よりも床暖房環境下の方が集中力の低下が少ない
  2. テスト内容が簡単だたっため注意力では環境による違いを見いだせなかった
  3. エアコン環境下よりも床暖房環境下の方が記憶の再生に有効である

このように、集中力と記憶力では床暖房環境下が優れていると結論付け、注意力は問題が容易だったため環境間の優位さを確認できなかったとしています。

結論に至るまでの実験過程

では、当該研究がどのような実験を経て上記の3つの結論を導き出したのか見ていくことにします。

実験としては、先ほど紹介した中学生108名を

  • 床暖房環境下でテストを受ける54名
  • エアコン環境下でテストを受ける54名

に分けたうえで、4つのテストを次のようなタイムテーブルで実施しています。

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「集中力」を計測した結果

内田クレぺリン検査 は、前半7回と後半5回の計12回行われました。

前半7回のうち最初のテスト結果と7回の平均点との差、後半5回のうち最初のテスト結果と5回の平均点との差を「集中力降下度」と定義しています。

そして、その結果は以下のようになりました。

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前半7回の集中力降下度の平均値は床暖房環境下の方がエアコン環境下より1.1ポイント少なく(少ない方が集中力が高い)、後半5回の集中力降下度の平均値は同じく床暖房環境下が2.0ポイント少ないことを示しています。

ここでは分散分析(有意水準5%)という統計処理のもと、床暖房環境下の方が集中力の降下度が小さく、集中力が持続していると結論付けられています。

「注意力」を計測した結果

次にブルドン抹消テストでは、クレペリンテスト同様前半と後半に分けテストが行われています。

その結果がこちらです。

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この結果については、有意差が見られなかったとしています。

「記憶力」を測定した結果

最後に行われた系列記憶テストでは

5個の無意味つづり記入した用紙を7枚用意して2秒おきに順に提示。その後、被験者に記憶した言葉を用紙に記入させ、さらに提示の順番を変えて7回の試行を繰り返した

という。その7回の結果がこちらです。

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この結果については、すべてのテストで床暖房環境下が優れている結果となり、7回のうち4回のテストで有意差が生じ、床暖房環境下の方が短期記憶の再生量が多いことから、ものごとを記憶する環境として床暖房環境下の方が優れていると結論付けられています。

 

床暖房論文に対する3つの疑問

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こうした研究の結論を見る限り、床暖房環境で勉強することはその学習効果を高める上でエアコン環境よりも効果的な環境であると言えそうです。

しかし、この論文を読めば読むほど、本当にこの実験の結果が適切な手順と手法で求められたものなのか疑問に感じる箇所が出てきてしまいました。

以下では、私がこの論文を読んで感じた3つの疑問を紹介します。

実験方法に関する疑問

まずこの研究で最も違和感を覚えた点が「実験方法」についてです。

この研究では、中学生108名を54名ずつに分け、床暖房環境とエアコン環境で各種テストを実施しています。

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論文を見る限り、こうして分けられた54名はすべてのテストをこの集団で受け続けているようなのです。

この何が問題なのかというと、実験を受ける中学生が持つもともとの学力差が結果に大きく影響を与えるのではないかと考えてしまいます。

これはここで行われたテスト結果のすべてが床暖房環境で行ったグループに軍配が上がっているという違和感から感じた疑問点になります。

いくら優れた環境下でテストを受けたとしても、同程度の学力がある集団が同じテストを受け、すべての結果で床暖房グループに軍配が上がるということがあり得るのでしょうか。

この疑念は、注意力テストの結果を見るとさらに強いものとなります。

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図4を見ると、エアコン環境でテストを受けた集団の標準偏差が飛び抜けて大きくなっていることが見て取れます。

「標準偏差が大きい」ということは、どういうことかはこちらの記事で紹介していますが、ざっくりいうと、集中力の低下量が激しい子がエアコングループの中にいることを意味しています。(点数が高い子がいれば結果は床暖房より高くなるはず)

2つのグループをどのように分けたのかは論文から読み取れませんが、こうした一連の結果を見る限り、もともと学力の高い集団と低い集団だった可能性が高いことが疑われてしまいます。

こうした疑念を取り去るためには、同じ環境下で一連のテストを行ってさえいれば良かったことになります。

統計処理に関する疑問

2つ目の疑問は、統計処理の方法にあります。

当該研究では、2つの環境下での学力差を分散分析という統計処理を用いて言及しています。

しかし、分散分析とは本来3つ以上のグループにおいて、平均値に差があるかどうかを判定する分析方法です。

分散分析とは3グループ以上の平均値の差を検定したい場合に用いる。しかしながら、分散分析がそのままビジネス上の意思決定で役に立つかというと、そうもいかない。

引用:統計学が最強の学問である(ダイヤモンド社)

ここでは床暖房環境下とエアコン環境下という2つのグループ間で結果に差があるかどうかを検定したいわけで、t検定やカイ二乗検定を行うのが一般的であるはずなのです。

というのも、分散分析では「すべてのグループが同じとは言えない」というかなり消極的な結果しか提示できないはずで、ここで主張しているような積極的にどちらかが優れているとする結論は導き出せないはずです。

注意力の結論への疑問

3つ目の疑問点ですが、これは研究者の研究姿勢に対する疑問です。

注意力の優劣判定ではブルゾン抹消テストによる分析が採用されています。

この注意力のテスト結果は上でも紹介したように、統計的な優位さを見いだすことができていません。

この結果に対し、論文内では次のように結論を導き出しています。

ブルゾン抹消テストは中学2年生には簡単な設問であり差が生じにくかったことが最大の原因である

この結論を見る限り、当該研究者は明らかに床暖房環境下に肩入れした研究姿勢をもってこの実験に臨んでいることが推察されてしまいます。

どういうことかと言いますと、統計処理を行う上で、どちらかに肩入れした姿勢で統計処理に臨んだ場合、結論はいかようにでも捻じ曲げることができてしまうのです。

1つ目の疑問点にもつながりますが、54人ずつのグループ編成において、恣意的に床暖房グループに学力が高い生徒を入れることができるわけです。

この恣意的という言葉の意味とその恐ろしさについては下記の記事を読んでいただければ分かります。

本来、統計処理を行い、注意力テストに有意差が生じないのであれば、床暖房環境下とエアコン環境下では注意力に差はないと結論付けることが公平かつ謙虚な研究姿勢です。それを「テストが簡単すぎたから差が生まれなかった」とするその姿勢はいかがなものでしょうか。

また、ブルゾン抹消テストは成人でも行われるテストであることを考えても、決して簡単すぎるテストというわけではないように思います。

この疑問は当該論文を発表した2名の方が東京ガス(株)基礎技術研究所の配属であることからも強い違和感につながってしまいます。

東京ガスは床暖房を販売している会社ですから、床暖房に有利な結論であって欲しいに決まっています。

この公平性が揺らいでしまうと、自分たちに有意な結果を研究という名のもとに作為的に作り上げただけになってしまうのではないでしょうか。

床暖房が学習効率を上げるは本当なのか

以上、本日は床暖房関連会社各社が主張している「床暖房を使った方が学習効率が上がる」とする情報の真偽を根拠となる論文とともに紹介してみました。

私は専門家ではないため、あくまでも素人目線で論文を読んだわけですが、その結論を主張するには少々疑問の残る研究内容のように感じてしまいました。

また、こうした家作り関連会社の研究は非常に公平性に欠けるように感じています。

というのも、以前には「鉄骨住宅で暮らすと早死にする」という論文を読んだ際にも、今回の研究同様一方に肩入れした不公平な実験が行われているように感じたからです。

家作りをする際、2つの設備があり、一方が他方より優れていることを主張する際、どうしても自社の設備をよく見せたいという気持ちが生まれるはずです。

ただ、そうした優位性の根拠を実験により主張するのであれば、統計処理も含め、公平な姿勢で臨んでほしいと思ってしまうのが、私たち消費者の立場です。

以上、本日は「床暖房を使用して勉強すると学力が上がる」という床暖房関連会社が主張する根拠を考察してみました。

床暖房とエアコンによる乾燥対策については、こちらの記事がおすすめです。

今後も当ブログでは暮らしに関する疑問について、その真偽を徹底分析し、発信していきます。興味がある方はぜひ読者登録・Twitterフォローをよろしくお願いします。


 

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