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「鉄骨住宅は身体に悪い」と言われた方に知ってほしい真実

鉄骨住宅住宅は体に悪い

営業マンが放った衝撃的な一言

わが家は家作りを検討するにあたり、鉄筋住宅に強い積水ハウスと国内大手である木造ハウスメーカーの2社に候補を絞込み、家作りを進めていきました。

私が2社を競合させていることは、どちらのハウスメーカー営業マンも知っていたのですが、そうした中、木造ハウスメーカーの営業マンから衝撃的な一言を言われたことを今でも覚えています。

 
鉄筋住宅は体に悪影響を与えます。住むと早死にしますよ!

 
げっ…マジですか!?

 

 

というものでした。

どうでしょう。この言葉みなさんも聞いたことがありませんか。積水ハウスのような鉄筋住宅を検討しつつ、木造ハウスメーカーの営業を受けるとかなりの確率で耳にするフレーズだと思われます。

このフレーズは、木造ハウスメーカーの殺し文句に使われ、「だったら木造住宅に住まなきゃ。」と思われる手法のようです。私自身もこの話を聞いたとき、正直木造住宅へ変更しようかと考えてしまいました。

しかし、このフレーズの根拠を調べていくうちに、「鉄筋住宅は身体に悪い」という事実は存在しないという結論にたどり着き、その後鉄筋住宅を建てることを決心しました。

この記事では、「鉄筋住宅は身体に悪い」とさかんに言われるようになったその理由と、真偽についてお伝えしていこうと思います。

 

「鉄筋住宅は身体に悪い」の根拠は論文にあり

「鉄筋住宅は身体に悪影響を与える」と言われるようになってしまったことには、科学的な根拠が存在しているのです。

その科学的根拠こそ、静岡大学農学部教授たちが発表した次の論文になります。

 論文タイトル:生物学的評価方法による各種材質の居住性に関する研究
A Biological Assessment of Dwelling Ability of Building Materials :
Comparison of Growth and Reproductive Performance of Mice Housed in Wooden, Metal, and concrete Cages
著者:伊藤晴康 他

 
この論文は、論文検索サイトAgriKnowledgeで検索、閲覧することができます。以下、この論文を引用し、分析を進めていきます。

行われた研究内容

ここで、当論文を分析するにあたり、まずは行われた実験内容について紹介します。

生まれて3週目のICRマウスを、以下の大きさの木製・亜鉛鉄板製・鉄筋入りコンクリート製の各ケージ(箱)にて飼育し、各材質の居住性について評価が行なわれている。
  • ケージの大きさ 11cm×17cm×30cm
  • 木製(ヒノキ)の厚さ18mm
  • コンクリート製(鉄筋入り)の厚さ31mm
  • 金属製(亜鉛鉄板)の厚さ0.4mm
このケージを各10個ずつ用意し、温度・湿度・照明を調節せず、観察する。
マウスは1ケージあたり2匹ずつ飼育し、実験期間は、1986年4月10日~同年7月13日。この期間において、ケージ中でオス、メス(第1世代)を一緒に入れ交尾させた後、生まれてきた子マウス(第2世代)の生物学評価を行う。

 
以上が、この実験の概略になります。
続いて、この実験により、得られた結果と評価を紹介します。

マウス実験による結果と評価

該当論文では摘要について、次のようにまとめられ、各種居住性の評価としています。

マウスの乳仔(第2世代)の発育に顕著な差が現れた。木製ケージ郡の乳仔は正常に成長を続けたが、コンクリート製及ぶ金属製ケージ郡では成長が著しく停滞し、弊死するものが続出した。(中略)木製ケージは動物の居住環境として、金属又はコンクリート製ケージより明らかに優れていることを示した。

 実際に、生まれてきた子マウスの23日間の生存率は次のとおりだったようです。

  • 木製ケージ → 85.1%
  • 金属製ケージ → 41.0%
  • コンクリート製ケージ → 6.9%

この結果を見ると、確かに鉄筋(コンクリート)住宅は身体に悪影響を与え、子どもにとっても健康を阻害する恐れがあると感じてしまいます。

そして、この論文を根拠に木造住宅のハウスメーカーでは、鉄筋住宅は人体に悪影響を及ぼすから止めたほうがよいという批判を繰り広げていることになるわけです。

浮かび上がるいくつかの疑問点

しかし、この論文を細部まで読んでみると、いくつか疑問を抱く内容が浮かび上がってきます。「鉄筋住宅は体に悪い」と言われ、疑心暗鬼になっている方がいらっしゃるのなら、ぜひ次のことに着目してから結論を出してほしいと思います。

私がこの論文を通して感じた疑問点は、次の4つです。

  1. 子マウス生存率の有意差は、温度差の影響に過ぎない
  2. 住宅において、各材質の上で直接生活するわけではない
  3. 木製ケージでは出産率が低く、直後の死亡が目立つ
  4. 研究が静岡県木材共同組合連合会の補助金により行われている

それでは、私が感じた疑問について詳細を紹介していきます。

疑問1.子マウス生存率の有意差は、温度差の影響に過ぎない

子マウスの生存率には確かに大きな有意差が見て取れます。しかし、ここで注目したいデータとしては、今回実験が行われた当該論文は、4月~7月の春先だったのに対し、同様の実験が7月~9月の夏場と10月~12月の冬場にも行われていたことはあまり知られていません。

私が夏・冬にも同様の実験が行われていることを知ったのは、当該論文中に、別時期での実験を示唆する記述があったため、探索したことがきっかけでした。結局、発表論文まではたどり着くことができなかったのですが、「建築ジャーナル」2001年3月号で有馬孝豊東京大学大学院教授の特集記事で同様実験が別時期に実施されている内容を読み取ることができました。

その記事によると、夏場と冬場のマウス実験では次のような結果になっていることが分かりました。

  • 7月~9月の夏場 → 各材質による健康状態の有意差が見て取れなかった
  • 10月~12月の冬場 → 各材質で親・仔マウスとも全滅してしまった

確かに、この結果は論文にまとめられない内容だと思います。

さて、皆さんは、このあまり知られていない残りの2回の実験を見て、何を感じられますか。私はこれらの研究結果を知って感じたことは、結局マウスの生存率は温度による差が大きく影響しているだけではないのかということでした。

つまり、どれだけ各材質が動物の熱を奪うことがないか、熱伝導率が低いか、これが生存率に影響を与えていると考えられるのです。

そうした観点で当該論文の実験を見直すと、かなり不自然な点に気付きます。それは、コンクリート製の飼育ケージのみとても分厚く作ってあることです。木製の厚みは、厚ければ厚いほど保温性が高まります。

一方、熱伝導率が一番高い金属製ケージの厚さはたった0.4mmしかなく、ケージの置かれた素材が木材だったことを考慮すると、金属により温度が奪われる影響は決して大きくはありません。

また、3㎝もの厚さで作られたコンクリート製ケージは外気温が下がれば、中にいるマウスの体温を大きく奪っていきます。こうしたケージそのものの作りにとても疑問を感じてしまいます。

疑問2.直接その素材の上に生活はしていない

 疑問①で私が感じたように「生存率の有意差が温度差によるもの」だったとします。そうだとするならば、温度差さえ解消すれば、素材による悪影響はなくなることとなります。

そして、我々が住宅で生活をする日常のことを思い浮かべると、各種素材の上で直接生活することはありません。

断熱処理が施され、最終的には建てられた建築素材である木材、鉄筋に関係なく、床材を選びます。木材住宅であったとしても、天然木材を床材に使用しないこともありますし、逆に鉄筋住宅であったとしても、天然木材を床材に使用することがあります。当該論文の実験のように、冷えきったコンクリートの上で暖房措置もとらずに飼育されるマウスのような状態で生活することは絶対にありえません。

つまり、温度差以外の要因が生存率の有意差に影響があることを証明しない限り、この論文を持って、鉄筋住宅が身体に悪影響を与えると言い切ることはできないというわけです。

疑問3.木製の方が、出産率は低く死亡が目立つ

出産後の子マウスの生存率については、確かにコンクリート製ケージの値が著しく低いことが読み取れます。しかし、論文内では強調されていませんが、実は出産率と直後の仔マウスの死亡数は木製ケージが高くなっているのです。

  • 木製ケージ 生存した子ネズミ…89匹 死亡した子ネズミ…5匹
  • 金属ケージ 生存した子ネズミ…130匹 死亡した子ネズミ…1匹
  • コンクリートケージ 生存した子ネズミ…105匹 死亡した子ネズミ…0匹

直後に死亡した数を率に換算すると、木製ケージは5%以上の仔ネズミが急死したことになります。また、そもそもの妊娠数も木製ケージ内のマウスが低くなっています。

 これがどれほどの意味を持つのかは分かりかねますが、当該論文でこのような木製ケージの悪いデータは摘要でも全く触れられておらず、あくまでコンクリート製ケージの悪いデータを前面に押し出し居住性の低さをアピールする結論となっています。

疑問4.研究が木材組合の補助金により行われている

 最後に、私が感じた最大の疑問点を述べます。それは、この論文が木材組合の補助金で行われたことです。これは、当該論文最後の謝辞にその事実が確認できます。

こうしたある特定の商品(この場合は鉄筋住宅という商品)のデメリットを科学的な根拠をもとに展開する場合は、あくまで公平性が望まれるのは当然のことです。それが、この論文からは全く感じられないことに怒りすら覚えてしまいます。

鉄筋住宅が身体に悪影響ということが科学的に示されるのであれば、当然木造住宅メーカーにとっては大きな批判材料になりえます。大きな恩恵を手にすることができることも想像に容易いです。それをもし意図して行われた実験だったとするならば…

「鉄筋住宅は身体に悪い」と言われたら根拠を聞く

 皆さんは、当該論文をどのように評価しますか。

論文事態の評価は難しいですが、少なくともこの論文を根拠にして「鉄筋住宅は身体に悪影響を与える。」「鉄筋住宅に住むと早死にする。」といった結論を導く出すことは困難であると感じていただけたのではないでしょうか。

もし木造ハウスメーカーの営業マンにこうしたフレーズを聞かされた場合は、ぜひその根拠をしっかりと確認してみてください。

最後になりますが、この記事で伝えたいことは、鉄筋住宅が優れているとか、木造住宅がダメとか、そういうことではありません。これから家作りをされる方には、根拠のない誹謗中傷が渦巻く住宅メーカーの営業手法に不安にならず、真実であり、かつ必要な情報をもとに家作りを進めていって欲しいのです。

これから家作りをされる方々が、この記事を通じ、木造住宅にするか、鉄骨住宅にするかの参考になり、理想の家作りが前進してくれることを願っています。

 

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